234 見舞い

初めてのビジネスクラス。

四年前の話。

大型連休初日に私と子どもは台湾台北の空港にいた。

その年の4月初旬。子どもの父親である前夫から連絡があった。前義父が余命宣告を受けた。大腸がんで持って多分半年。日本に行ってしまった孫に一目会いたいとのことだった。

私は当時新しい彼(後に再婚相手となる)と結婚前提で同棲を始めた頃だった。前夫との離婚は泥沼で、裁判沙汰にまで発展した。離婚以後は子どもの面会を通して会ってはいたが、前夫との過去を一切断ち切りたかった。

台湾に行くのは気が乗らなかった。恐らく新しい彼も嫌がるだろうと思ってなかなか話を切り出せなかった。案の定切り出すとあまり良い気はしていなさそうだったが、最終的に「子どもにとっては血の繋がったおじいちゃんだからな」と了解してくれた。

子どもの学校を休ませられないので、3泊位で往復するという強行スケジュール。金に射止めはつけなくて良いと台湾側の了承を得て、連休前日最終便のビジネスクラス、二人で20万円というチケットで出国する。(でもやっぱり高いと愚痴られたが)

前夫は既に再婚していて、当時1歳位の息子がいたという事情もあり、台湾では彼らと一切行動を共にしなかった。子どもが前義父の見舞いに行くときは、前夫と待ち合わせて子どもを引き渡し、終わったら引き取った。

引き取る時、前義父が私にも会いたがっていると聞いた。料理がうまく、娘のように良くしてくれた前義父。彼らの親戚がいない時間に会いに行ってと頼まれたが、結局会わずに帰国した。

前義父はそれから数カ月後に亡くなった。

今でも前義父のことをたまに思い出す。あの時、見舞うのが正しかったのだろうか。台湾での生活も、前夫との関係ももう戻らない。だからこそ見舞わなかったのが正解と信じている。

人はいつか死ぬ。あとどれくらいこの世にいるかわからないけど、前を向いて生きていく。

までも、そちらに行ったらまた飲みたいです、お義父さん。


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